製紙汚泥減容化テスト報告書

(要 約)

製紙汚泥を水撃装置で処理した結果、以下の知見が得られた。
① 水撃圧力16Mpa、水撃回数18回で汚泥は20%以上可溶化する(V-SS基準)。
② 水撃汚泥を凝集させるには無機凝集剤で汚泥表面の電荷を中和した後、カチオン系高分子凝集剤を併用することで凝集性が向上する。
③ 凝集した汚泥を脱水する際、簡易濃縮機(ドラムスクリーン)で固液分離すれば脱水効率が大幅に向上する。フィルタープレスで脱水した場合、脱水ケーキの含水率は25%と驚異的な値が得られた。汚泥細胞壁が破壊されていたためと考えられる。
④ 水撃処理した汚泥を全量、曝気槽に返送した場合、SSの分解が促進され、重量ベースで余剰汚泥は80%程度削減可能と推察される。
⑤ 水撃汚泥は通常の汚泥より腐敗の進行が早いことから嫌気性消化(メタン発酵)の前処理に適用すれば汚泥消化日数と消化率が大幅に改善されることが期待できる。

1.目的

製紙汚泥を水撃装置(テスト機)で処理した場合の汚泥可溶化状況を把握するとともに、各種成分分析を元に汚泥減容化率を推定する。また水撃汚泥について、ドラムスクリーンによる簡易濃縮と脱水機の組合せによる実質的な汚泥削減を把握する。さらに装置スケールアップの設計仕様を得る事を目的とする。

テスト方法

(1)水撃条件の把握

製紙汚泥は有機質と無機質を含んでいるが、可溶化するのは有機成分であることから、水撃処理のみで可溶化するのは1/3(33.3%)程度が限界と考えられる。そこで約500ℓの汚泥を90分連続運転し、1/3(33.3%)の可溶化を得る水撃圧と水撃回数を把握する。

パラメータの設定:

1)インバータ:最小45Hz、最大63Hzとする

2) T1(水撃前置時間)、T2(水撃後時間)、T3(圧抜時間)の最適値を把握する

(2)成分分析項目

SS、VSS(ブランクのみ)、T-COD、S-COD、T-BOD、S-BOD、T-P、S-P、T-N、S-N

ブランク汚泥および水撃45分と90分の汚泥を分析する。

(3)汚泥凝集テスト

500mlのビーカに水撃45分汚泥サンプルを入れ、10種類の凝集剤の中から最適凝集剤と添加量を把握する。ブランク汚泥も参考として凝集テストする。

(4)汚泥簡易濃縮テスト

水撃90分処理後の汚泥に上記で選定した最適凝集剤を注入し、汚泥のフロック化を行う。このフロック汚泥を回転ドラム型濃縮機に投入し、ドラムスクリーンの隙間から液分を排出することで汚泥を固液分離して簡易濃縮を行う。投入重量と濾過液重量を測定し、簡易濃縮率を把握する。また濾過液の成分分析も実施する。

表1 濃縮機仕様(東洋製ドラムスクリーン)

ドラム寸法 φ350×L600
外形寸法 W820×L1,300×H1,000
動力 Φ3×200V×0.2 kw
ドラムスクリーン目幅 0.1mm

(5)脱水テスト

ブランク汚泥および水撃90分汚泥と簡易濃縮汚泥をフィルタープレスで脱水し、含水率を測定する。

図1 テストフロー

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①ブランク汚泥成分分析

②水撃45分汚泥成分分析

③水撃90分汚泥成分分析

④濾過液成分分析

⑤濃縮汚泥成分分析:(③-④)で推定

⑥脱水汚泥:①③⑤脱水後の含水率と重量測定

テスト結果および考察

(1)水撃回数

汚泥処理量および下記処理時間の設定(1回の水撃サイクル=11.6秒)により水撃回数を計算すると、水撃45分の水撃回数は12回、水撃90分の水撃回数は24回となった。

T1(水撃前置時間6秒)+T2(水撃後時間0.6秒)+T3(圧抜時間5秒)=11.6秒

(2)水撃圧力について

水撃弁の作動タイミングを制御(T1,T2,T3タイマー設定)することにより最大水撃圧は16 Mpaとなった。

(3)水撃回数と可溶化率について

各検体の成分分析結果を別表に示す。可溶化率を以下の方法で判定すると、水撃12回で可溶化率15.4%、水撃回数を2倍の24回にすると23.1%となり、水撃回数を多くすると可溶化率も上がる

(図2)。

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図2 水撃回数と可溶化率(V-SS基準)の関係

ここで、可溶化するのはV-SS成分のみと仮定すると(2,000mg/lは無機とし、11,000 mg/lを基準にした場合)可溶化率はそれぞれ19.1%、27.3%となる。

V-SS基準の可溶化率近似式は y = -0.0267×2 + 1.8058x + 0.32 となり、水撃回数を3倍の36回に増やすと可溶化率31%となり、目標(33%)に近づくと思われるが、逆に汚泥処理能力が減ることになる。汚泥処理量との兼ね合いから、今回の水撃圧(16Mpa)で効率的な水撃回数は18回として今後の設計指標とする。

処理能力を上げるため今後、配管距離を延長し、目標水撃圧を36 Mpaとし、インバータを廃止する。

また、上記可溶化指標以外に各成分のブランク汚泥に対する増減値を見ると、可溶化に関係するS-COD、S-BOD、S-N、S-Pはいずれも顕著に増加していることからも可溶化が進んでいると思われる。

(3)凝集剤について

富士化水工業㈱製のカチオン系高分子凝集剤10種類で水撃45分汚泥の凝集性を検討した結果を表2に示す。

表2 凝集テスト(汚泥量500ml)

凝集剤品番 添加量mL 評価
FC8490S 10
FX7901 20 ×
FK-A 20 ×
FX1583 20 ×
FX3851 20 ×
FX8255 14
FC340T 16
ZP-700 5
FC140T 12
FK-D 11

ZP-700が最も凝集性が良く添加量も少ない。次にFC8490Sであった。

ZP-700が5mlと少量ではあるが、FC8490Sを10ml を添加する方が安価になるので費用対効果を加味して選定する必要がある。なお、硫酸バンドを添加すると凝集性が向上することを確認した。なお水撃90分汚泥は上記の2倍量以上の添加が必要であった。

(4)簡易濃縮について

水撃90分汚泥をドラムスクリーンで簡易濃縮した結果、投入量:79.6 kg(SS 10,000mg/l)、濾過液:60.3 kg(SS 5,600mg/l)、濃縮汚泥:19.3 kgとなり、重量比で汚泥は約1/4(24.2 %)に濃縮された。また水撃汚泥SSの42.5%{=60.3×5,600÷(79.6×10,000)×100}が濾過液に含まれていることになる。

一方、ブランク汚泥の凝集には現状のアコフロックE-3380(MTアクアポリマー社製)+硫酸バンドを使用し簡易濃縮試験を行った。ブランク汚泥の濾過液SS(13,000 mg/l⇒1,500 mg/l)に比べると水撃汚泥の濾過液SSが高いのは(10,000 mg/l⇒5,600 mg/l)、凝集性の違いに加えて、破壊された細かな粒子の汚泥がドラムスクリーンの隙間を通過したものと考えられる。

(5)脱水試験

凝集剤(ポリシリカ鉄+カチオン系高分子凝集剤)でブランク汚泥と水撃汚泥を凝集させ、フィルタープレスで脱水試験した結果を別紙1~3に示す。

含水率はブランク汚泥84.75%、水撃90分汚泥43.13%、簡易濃縮汚泥(水撃90分+ドラムスクリーン)25.45%となった。簡易濃縮することによって驚異的な含水率となった。

水撃処理により非可溶化汚泥の細胞膜にも亀裂が入り、細胞内物質が飛び出したものと考えられる。水撃処理の場合、可溶化率は20%程度でも十分再基質化していると思われる。

なお、加圧回数に大きな差があるのは投入タンク内での凝集汚泥の分布が均一でなかったためと考えられる。すなわち凝集汚泥が分離しないよう投入タンク内の撹拌機を止めていたため、脱水機に投入されるSS濃度のバラツキが大きくなったものと考えられる。

(6)水撃処理量について

23.1%可溶化された水撃汚泥の内、338g(=60.3kg×5,600 mg/l)の非可溶化SSが簡易濃縮後の濾過液に含まれている。この濾過液を曝気槽に返送することになるが、非可溶化SSであっても汚泥が破壊された微粒子であれば生物分解するものと考えられる。

一般に、基質化された汚泥の1/2~1/3が曝気槽で消滅するが、残りは再生成汚泥となる。したがって返送汚泥の2倍~3倍の汚泥を水撃処理しなければならない。

ここで、ブランク汚泥SSの1,045g(=79.6kg×13,000 mg/l)に対し、返送される濾過液SSは0.323(=338÷1,045)となる。すなわち余剰汚泥の1.65倍~1.97倍{­=1+0.323×(2~3)}に相当する量を処理すればよいことになる。実運転では曝気槽の健康状態(MLSS、BOD、COD等)を見ながら、数ヶ月かけて徐々に水撃処理量を上げて行く。

(7)余剰汚泥削減率予測

水撃処理で汚泥が23.1%可溶化された後、返送濾過液SS(42.5%)の残り57.5%のSSが余剰汚泥となる。したがってSSベースでの余剰汚泥は(1-0.231)×0.575=0.442となり50%以上の削減効果が得られた。一方、フィルタープレスによる脱水では、含水率低下効果(84.85%⇒25.45%)によりブランク汚泥重量の20.5%になるため、単純計算すると0.442×0.205=0.091となる。すなわち重量ベースでの余剰汚泥は90%以上削減されたことになる。

なお、水撃処理した汚泥を全量、曝気槽に返送した場合、非可溶化SSも(5)で述べたように、生物分解される可能性がある。弊社の次亜塩素酸による汚泥削減(70%)の経験から、水撃処理も同等の効果があると仮定すると、SSベースで余剰汚泥は30%程度まで削減される。フィルタープレスの脱水効果を加味すると0.3×0.205=0.062となり、脱水のみによる余剰汚泥削減より減量化が進むと考えられる。一般に使用されているスクリュープレスによる脱水性はフィルタープレスより悪くなることを考慮しても、重量ベースで80%程度の余剰汚泥削減は可能であると考える。

(8)可溶化汚泥の消化処理について

2012年7月、可溶化汚泥サンプリング後、2日目に実施した脱水汚泥の状況を示す(図3)。

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図3 水撃汚泥の状況

水撃処理した汚泥の腐敗が顕著であったことから、嫌気性消化の前処理に水撃が適用できることが考えられる。有機物の消化率は大幅に改善されることが期待できる。

水撃処理と同じ物理的破壊(高速・高圧ミキシング)による可溶化例では2.43倍のバイオガス生成量が得られている(図4、図5:㈱エナジェン)。

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図4 累積バイオガス生成量の経時変化

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図5 日量バイオガス生成量の経時変化

(9)水撃装置仕様

テスト結果より水撃回数は多い方が可溶化は進むと考えられるが、処理量との兼ね合いで効率的な水撃回数を設定するとすれば、今回18回が適当であると考える。これを標準として今後の水撃装置仕様を検討した結果を表3~表4に示す。

なお、処理水SS濃度15000ppm、脱水ケーキ含水率80%として汚泥処理量を計算している。

水撃効率は上部配管の水撃率と下部配管の水撃圧の寄与率を考慮して計算している。

テスト装置の主な改造内容

① 処理水供給ポンプの圧力を上げるため低圧給水ポンプ(水中ポンプ)を追加

② 防音設備設置(オプションとしてドラムスクリーン&コンプレッサ設置)

③ 制御プログラムを日本語に変更

③ 水撃フランパッキンはOリングに変更(2号機以降すべてのフランジ接続部はOリングとする)

表3  テスト装置の改造仕様

仕様 テスト装置 改造(初号機)
配管形状 上50A×下100A×各16.5m         (定尺5.5m×上下各3本) 同左
汚泥処理量 処理水10m3/d

(水分80%脱水ケーキ換算0.75t/d)

処理水24m3/d

(水分80%脱水ケーキ換算1.8t/d)

水撃 圧力 16 Mpa 22 Mpa
水撃 回数 18回 13回
水撃 効率 0.86(=0.688×1.25) 0.98(=0.785×1.25)
インバータ設定 45Hz⇔63Hz 60Hz⇔60Hz
タイマ設定 T1=6秒、T2=0.6秒、T3=5秒

(11.6秒/サイクル)

T1=3.5秒、T2=0.5秒、T3=3秒

(7秒/サイクル)

水流 速度 8m/s 11m/s
汚泥供給ポンプ 吐出量1.2m3/min×圧力50m 吐出量1.2m3/min×圧力50m

+吐出量1.3m3/min×圧力10m

動力 30kw 30kw+7.5kw

表4  スケールアップ装置仕様(計画値)

仕様 Proto 2 Proto 3
配管形状 上100A×下150A×各30m         (定尺6m×上下各5本) 上125A×下150A×各30m        (定尺6m×上下各5本)
汚泥処理量 処理水300 m3/d

(水分80%脱水ケーキ換算22 t/d)

処理水600 m3/d

(水分80%脱水ケーキ換算44 t/d)

水撃 圧力 36 Mpa 36 Mpa
水撃 回数 8回 6回
水撃 効率 1.87(=1.30×1.44) 2.22(=1.30×1.69)
インバータ設定 なし なし
タイマ設定 T1=4秒、T2=0.5秒、T3=3秒

(7.5秒/サイクル)

T1=4秒、T2=0.5秒、T3=3秒

(7.5秒/サイクル)

水流速度 10 m/s 10 m/s
汚泥供給ポンプ 吐出量4.2m3/min×圧力60 m 吐出量6.5m3/min×圧力60 m
動力 90kw 130kw

別表

  汚泥分析結果一覧

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水撃テスト装置